スネアドラムのチューニング方法

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スネアドラムのチューニングの仕方 | 楽器本来の“鳴り”を活かす

〜はじめに〜

 

 「チューニング」というと一般的には基準の周波数(A=442HzやA=440Hz)で音程を合わせることですが、打楽器(ティンパニなどの音程楽器を除く)でいうチューニングとは求める音色を創ることをいいます。
 あらゆる場面においてその場にもっともふさわしい理想的な音を創るということなのでセンスが問われる難しい作業です。

 

 “良い音”については【“いい音”とは?】でお話しましたが、ここでは代表的な打楽器スネアドラムのチューニングについて「楽器本来の“鳴り”を活かす」をテーマに実際のチューニングの手順を各ポイントをおさえながら解説しています。

 

チューニングの手順

@.ヘッドを外す

 テンション・ボルトを緩めて交換するヘッドを外します。(ここでは表面と裏面の両方を交換する手順を解説しています。)
 ボルトを緩める順番は特に気にする必要はありませんが、ウッドフープなどの強度の弱いフープを使用している場合は負担の偏りをなるべく防ぐために対向線ごとに緩めましょう。

 

 1本1本緩めるのはけっこう時間がかかります。
 時間をかける必要がないところはできるだけ早く済ませたいですよね。

 

≪ボルトを早く外すコツ≫

・チューニング・キーである程度緩めたらあとは手で回す。
・手持ちの部分が長いチューニングキーを使って遠心力を利用する。
・電動ドライバーに装着可能な(EVANS/Drill Bit Drum Key)を使用する。

 チューニングキーの種類を知りたい方は【チューニングキーの種類と特徴】を参照してください。

 

 

A.シェル、フープを乾拭き

 ヘッドを外したら楽器用のクロスなどでシェルとフープを乾拭きします。

 

 汚れていない方はこの工程を省いても良いですが、ヘッドとの接点になるシェルのエッジ部分だけはなるべく乾拭きしておきましょう。
 エッジ部分の油汚れはヘッドの振動の妨げにもなるので。

 

シェルの汚れが気になる方は

 長年溜まった汚れをとりたい方はシェル専用クリーナーなどを使用する。ギター用のポリッシュでも良いです。
 多目的用の洗剤でも代用できますが、オイル・フィニッシュのウッド・シェルやメッキが薄かったり剥げてたりしているシェルに使用すると塗装が剥がれてしまう可能性もあるので注意が必要です。
 今回チューニングしたこのスネアは15年くらい使用しているものですが、多目的用の洗剤で磨くことでここまできれいになりました!↓

 

 

B.フープのゆがみ、ラグのボルトの緩みをチェック

 続いて、チューニングに影響のあるフープのゆがみ、ラグのボルトの緩みをチェックします。

 

 フープ(シェルも含む)のゆがみがあるとヘッドを均等な張力で張ることができないため叩いたときに音が散ってまとまりのないサウンドになってしまいます。
 楽器を落下させたときはもちろん、パワーヒッターやリムショットを頻繁にする方も確認しておきたい部分です。

 

 フープのゆがみ水平な床などに置くことでチェックできます。
 ラグ固定ボルトの緩みチェックも忘れがちになりますがしっかりチェックしておきましょう。

 

 

C.シェルにヘッドをのせる

 シェルに新しく張るヘッドをのせますがここで1つポイント。
 それはシェルの縁とヘッドの枠との幅を均等になるように調整することです。

 

 わずかな幅ですが偏ってしまうとこの後の工程のボルトでのチューニングが難しくなってきます。

 

 

 

 目で確認しながら微調整してもよいですが、写真のようにヘッド中心部を垂直に軽く押すことでシェルの縁とヘッドの枠との幅は均等に保たれます。

 

 ヘッドの種類については【スネアヘッドの種類一覧】を参照。

 

 

D.フープをのせる

 テンション・ボルトはそれぞれフープの穴を通って垂直にラグに差し込む必要があります。

 

 そのためには写真のように上から見たとき各フープの穴からラグの穴が全部見える位置に調整します。

 

 斜めの状態でもボルトを回していけば垂直に入るのですが、この場合ヘッドも一緒に動いてしまいます。
 これを避けるためにフープをのせる段階でなるべくヘッドが動かないように調節する必要があるのです。

 

 

E.テンション・ボルトを差し込む

 テンション・ボルトをフープの穴に通したら図の順番通り、テンションがかかるところまで締めていきます。

 

 すべてのボルトをテンションがかかるところまで締めたら今度は同じく図の順番通り、はじめは180度(1/2回転)ずつ締めます。
 次に90度(1/4回転)→45度(1/8回転)と回転の度数を減らしながら、およそA(ラの音)の音程にあわせます。

 

 ここで1度スネアを平らな場所に置き、ヘッドの中央を押さえつけて楽器になじませます。(右の写真)

 

 ヘッドがなじんだことで音程が少し下がっていると思うので再びA(ラの音)をめがけて少しずつボルトを締めます。

 

 

F.求めるピッチにする

 ヘッドの中心を叩いて音を確かめながら求める音色のピッチ(音程)にあわせます。

 

 スネアは構造上の理由で楽器が良く鳴る(抜けが良い)音程の範囲は一般的な14インチの場合、G(ソ)〜C(ド)ぐらいです。
 その範囲を超えると、叩いたときのヘッドの振動やシェルの共鳴もが少なくなってしまい楽器本来が持つ“鳴り”が活かせないからです。

 

G(ソ)〜C(ド)のどこに合わせるかはプレイヤーの好み、曲の雰囲気などによって違い、スネアのキャラクターを大きく左右する部分でもあるのであらかじめ使用する場面を想定した上で求めるピッチに合わせていきます。

 

 正確に音程をある高さに必要はないのですが、目安としてチューナー(最近では無料のアプリなどもある)やピアノなどを使うのも良いでしょう。

 

 

G.ヘッドの張力を均等にする

 次にヘッドの張力を均一にすることで倍音が整ったまとまりのあるサウンドにします。
 具体的には各ボルトから1〜2cmのヘッド上をスティックや指などで叩きながら、各所の音程を均一にしていきます。

 

 慣れていない方にとっては初めのうちは難しいかと思いますが、あまり神経質になりすぎず、「あきらかに偏ってる箇所をなくす程度」と考えていただいていいと思います。

ピッチを均等にするコツ

・ヘッド中央を指で軽くミュートすると各ボルト付近の音程が聴き取りやすい。
・基準の音を一箇所決めて各所をそこに合わせる。
・叩いた音のトーンを声に出すとピッチの高低がわかりやすい。

 

 

H.裏ヘッドを張る

 表ヘッドと同様、裏ヘッドも基本的には「4.シェルにヘッドをのせる」〜「8.ヘッドの張力を均等にする」の工程を行います。

 

 裏ヘッドのピッチは表ヘッドと同じかやや低くするのが良いといわれていますが、実際はいろいろと張り具合を変えてみて楽器が1番鳴るピッチを探すのがいいです。
 また、楽器によってはスナッピーのあたるシェルのエッジ部分が少し削られているモデルもあり、その場合、均等にボルトを回してもスナッピー付近のヘッドはやや緩くなるということも頭にいれておきましょう。

 

 

I.スナッピーを装着する

 まず、スナッピーを中央よりややストレイナーと反対側(バット側)のほうに寄せて乗せます。
 次に、バット側→スナッピー側の順で紐またはベルトをなるべく弛みがないように固定します。(*このときストレイナーはON、テンション調整ノブは緩めた状態にしておく)
 最後にスナッピーが中央にセットされているかチェックして、もしどちらかに偏っていたら再度ボルトを緩めて調節します。

 

 スナッピーはスネアのキャラクターを決定づける重要なアイテムです。
 ここではスナッピーについて掘り下げた解説はしていませんが、スナッピーについて種類や特徴を知りたい方は【スナッピーメーカーの種類一覧とラインナップ】を参照してください。

 

 

完成!

 すべてのチューニング工程が完了したらスナッピーをONにして実際に演奏してみましょう。
 いつも叩いているフレーズを叩くとチューニング前後の音の違いに気づきやすいです。
 全体的な音のまとまり、音抜け、ピッチはいかがでしょうか?
 もし納得いかなければ「こんなもんか」と妥協せずにチューニングの各工程からやり直すことも大事です。

 

 スネアドラムのどこの部分をどのようにいじったらどうなるか楽器と対話して研究することは今後の“より良い音創り”に必ず活きてくるに違いありませんから。

 

 ちなみに・・・私がチューニングしたスネア(Ludwig/スープラ・フォニック/LM400T)は普段ドラムセットに組み込んで使用することが多いですが、今回は実験的に国内唯一のドラムヘッドメーカー「アサプラ」のスネアヘッドに張り替えてみました。
 ある程度予想はできていたのですが、やはりメタルシェルとの相性はあまり良くないみたいです。翌日にはウッドシェルに張替えてしまいましたが、こちらは相性ばっちり!
 本皮に近い暖かみのあるサウンドが得られるので特に吹奏楽やオーケストラには重宝できそうです。

 

 

〜最後に〜

 今回はスネアのチューニングについて解説しましたが、打楽器の音質を作っている要素というのはたくさんあります。
 スネアドラムであれば、シェルの素材、厚み(プライ数など)、サイズ、ヘッドの材質や厚み、フープやラグ、スナッピーなどがそれにあたります。
 音を追求するにはまずそれらの種類や特徴を知つことも大事です。

 

 どんどんインプットしてアウトプットに活かしていきましょう!
 実は私もこのように記事を書く(アウトプットする)ことで見直しと定着を図っているのです。
 そして、皆様が打楽器と向き合う上での疑問や問題を解消するヒントに少しでもなれればなによりです。

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