打楽器演奏における“脱力”の重要性を考える

打楽器演奏における“脱力”の重要性を考える

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打楽器演奏における“脱力”の重要性を考える

打楽器演奏における“脱力”の重要性を考える

スポーツの分野に限らず、音楽(打楽器)の分野においても音大やドラムレッスンなどの多くの教育現場で取り上げられる“脱力”という考え方。

 

なぜ、ここまで脱力がここまで重要視されるのか?
また、脱力(力を抜く技術)を習得することは演奏にどのような影響・メリットがあるのか?

 

ここでは、打楽器演奏における“脱力”の重要性・影響力について考えてみたいと思います。

 

 

脱力とは?

一般的に“脱力”と言うと「体から力だ抜けてぐったりする。また、意欲・気力が衰えること。」を意味します。
緊張している場面や、新しい物事を始めて少しムキになってしまっている時、その周りの人に「肩の力を抜いて楽に・・・」などと言われますが、この場合の脱力は「精神的な緊張をほぐして気を楽にする」ということになります。

 

しかし、ここでいう“脱力”とは「スティックをコントロールするための必要最低限の筋肉を使うが、それ以外の余計な力を抜く」という意味です。
あくまでも、「気力を抜く」という意味ではありません→┌┤´д`├┐ダル〜

 

精神的な緊張をほぐす場合、深呼吸したりすることで、す〜っと落ち着きを取り戻すことができます。
しかし、打楽器における脱力は言い換えれば「力を抜く技術」のことで、一見簡単そうに聞こえますが、これが意外と難しいのです。

脱力法を妨げる間違った奏法・練習

 

  • 抜けの良い音を出したい!
  • 表現の幅を広げるために手を早く動かせるようになりたい!
  • 長時間プレイしても疲れにくい奏法を習得したい!

 

ドラムやその打楽器全般を演奏する上で、このような欲求は向上心のあるプレイヤーであれば誰もが思うことですよね。
しかし、次のような間違った奏法や練習を行うことは効果がないどころか、かえって逆効果になる可能性があるので、十分に注意していただきたいです。

 

  • 抜けの良い大きな音を鳴らすために力任せに叩く。
  • 速く手を動かすために、スティックをぎゅ〜っと握り、腕全体の筋肉を震わせながら連打する。
  • 長時間プレイしても疲れにくい筋肉を作るためになんらかの筋トレを行う。

 

もちろんスティックを持って楽器を叩く以上、筋肉は必要になってきますが、冒頭でも言ったように必要以上に余計な筋肉を使うことは、音楽表現の妨げになります。

 

特に初心者の方に多いのは2番目の「筋肉を震わせながら連打する。」です。
スティックを強く握りしめ、肩から指先までの腕全体を硬直させながら連打することは確かに、スティックを握ったばかりの人にとってはそれが手を最も速く動かす手段なのかもしれません。
ただし、顔を真っ赤にしながら叩くそのような叩き方は、脱力した叩き方に比べると、速度の面だけでなく持続性にも劣ります。

 

また、打音は音色・強さなどを音楽シーン応じて多彩に変化させる必要があります。
力任せに叩く音は繊細さに欠けた単調な音になりがちなので音楽表現の幅は狭くなってしまうのです。

脱力を身に付ける2つのメリット

 

ここでは、効率的・合理的な脱力奏法を身に付けることで生まれる2つのメリットを解説したいと思います。

 

楽器本来の“鳴り”を得ることができる

打楽器の種類は多種多様に存在し、楽器によって叩き方やバチ(スティック、マレットなど)が異なります。
トライアングルのような小さい楽器には一般的にはビーターと呼ばれる金属の棒が用いられ、銅鑼(タムタム)には大きく重い専用のバチが用いられるように、それぞれの楽器の大きさ、素材、または音楽場面に応じて最も“良い音”が引き出せるようにあらかじめ考えられたバチが用意されていますね。

 

本来はバチが持つ重さと重力を利用するだけで十分な楽器の鳴りを出すことができ、そのバチに与える“重み”と“速さ”を調節して音色や強弱を付けるのが体(腕や手)の役割です。
要するに、楽器とその楽器を鳴らすバチのバランスが良い状態で保たれていれば、そこに加わる外部からの余計な圧力は必要ないということです。

 

また、振り下ろしたスティックが打面をヒットする瞬間はスティックを握り締めず開放させておくことで、ヘッドの振動を抑えることなく楽器が持つ自然な響きが得られるのです。

 

バスケットボールを体育館に弾ませる音って聞いてて心地いいですよね。
イメージとしてはこれに近く、バスケットボールが地面にヒットする瞬間は手から完全に開放されていまることがわかります。
仮に、地面にヒットする瞬間も手から離れていなければ振動は抑えられますが、このときどんな音がするかは想像できるかと思います。

 

 

表現の幅がグンと広がる

音色を作る要素は、楽器の大きさ、素材、形などに違いだけではなく叩き方の違いによっても変化します。
小さな音、深い音、鋭い音、明るい音、軽い音など、いろんなサウンドキャラクターを引き出すためにはスティック等を振り下ろす“距離”、“速さ”、“重さ”を多様に変化させる必要があります。
例えば、スネアドラムで「小さい音」「鋭い音」「軽い音」を表現したい場合、次のようにします。

 

小さい音・・・・・振り下ろす距離を短くする
鋭い音・・・・・振下ろし、振り上げのスティックに速さを加える
軽い音・・・・・スティックが打面にあたる瞬間に加わる重みを軽減させる

 

このように、スティックが重力で自然に落下するエネルギーを基本に、なんらかの要素を加えることで音に表情をつけることができます。

 

さて、振り下ろす距離をコントロールするのは比較的容易ですが、落下するスティックに速さを加えたり重みを加えたりするのにはちょっとしたコツが必要になってきます。
それは、腕から手先にかけて存在する4〜6の関節を合理的・効果的に動作させることです。
そして、関節を柔軟に稼動させるためには脱力が必要不可欠になるわけです。

 

脱力のもと関節を上手く利用することで、多彩な音色を無理なく柔軟に引き出すことができるのです。

 

詳しく解説するとちょっと長くなるので、音色に対応させる関節の具体的な利用方法はまた別の機会(近日中)にお話したいと思います。

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